酔っ払いどもの戯言
聞方代：第参話

「漢（おとこ）の飲り刻（とき）についての考察」

師　匠：まったく、この世の森羅万象すべてにおいて、存在するに意義があると思うが、このコーナーほど不必要なモノはないな。
ター坊：非道いなぁ。ようやく参話まで漕ぎ着けたんですから、ちょっとは誉めてやってくださいよぅ。このページは、極めて高度な飲酒理論（？）を科学的に追求し、尚且つ、呑み助道を哲学的、形而上学的に掘り下げてゆくという、いんてりじぇんす溢れるコーナーなんですよ？
師　匠：ああ、おまえの馬鹿うんちくはもう聞き飽きたから、先に進め、先に。
ター坊： へい。第弐話では至高のつまみは何か？　「それはピカチュウである！！」　というところまで、お話しましたね？
師　匠：してねえよ、コラ！　そもそもピカチュウは「めるひぇん」の世界の生き物だろうが。それにあれは電気を発して肉が硬そうだという意見もあったぞ。
ター坊 それは違います。電気は肩のコリをほぐし筋肉の緊張を和らげます。よって肉はやわらかく、油分も少なく、鳥ササミのような味なのです。ひとつ問題があるとしたら、あれは合いの子、つまりハイブリットのＦ1（一代雑種）なので、繁殖能力が無さそうだということですね。
師　匠： ………………。
本当に頑固だな、おまえという奴は。もうそういう事にしといてやるから、今回のお題目をはよう言いなさい。
ター坊： へい。漢（おとこ）には、究極の酒と至高のつまみを果てなく求める心意気が必要です。さらに加え、これらをいつ飲るかということも極めて重要な命題であります。この三位一体のひとつである「漢（おとこ）の飲り刻（とき）」について考察するぜっ、ってえのが、今日のお話です。
師　匠：うむ、まぁ言ってる事はバッタもんクサいが、ワシも呑み助の端くれ、気持ちは理解するぞ。この飲り刻（とき）というのが、実は一番大切な要素といえるな。酒は決して現実逃避や自分の居場所ではないが、飲り刻（とき）を間違えたが為に人生が大きく変わる事も大げさに言えばあるかもしれないな。
ター坊：受験勉強の追い込みの時期に発売されるＦＦ（ファイナルファンタジー）買ってしもて、思わずハマり、受験に失敗するようなものですかね？
師　匠：まあ、おまえレベルでは解りやすいモノの例えだな。
ター坊：あっ、また非道いなぁ。四六時中飲んだくれてるヤドロクで、床にそのままゴロンと寝ちゃって、ダニに刺されちゃったりして、奥さんに叱られているヒトも何処かにいますけど…
師　匠：貴っ様ぁーっ。それが師匠に対する言葉かっ！？
ター坊：ごめんなさい。でも人生の選択を間違えるほど、馬鹿な酒を飲みゃしませんが、ここで取り上げたいのは、独りでチビチビ寝酒を飲る時の、呑み助的心理チックな「飲り刻（とき）」の選択の事です。
師　匠：例の会のことだな？
ター坊： はい。「木曜日に深酒をする会」です。現在会員数約２名、すなわち会長であらせられる御師匠とオイラのことですね。この会の主旨は、あと一日勤めれば休みになるのに、どうしても木曜日に深酒してしまう気持ちにワビ、サビがあります。つまり「ああっ、明日も仕事かよー、ちっくしょー」と言いながら鬱々と飲む酒こそ、そこには真実があり、酔い心地が加速するのであって、約束された明日を待つ夜（つまり自由を手に入れた金、土曜日ね）の酒はいくら飲んでも酔わないワケです。嗚呼！　誰知るか、百尺下の水の心…。ちょうど試験勉強しなければいけないのに、サボって読むマンガがとても楽しいのに似ているといえます。要は相当屈折した呑んだくれの異常心理といえるんですけど。そういうわけで、硬派なら土日祝祭日の前夜は呑まず、平日だけ飲るのが正しい呑み助道といえましょう。
師　匠： う〜む。傍で聞いているとただの馬鹿だな。
ター坊：またまた非道いなぁ、その親玉のくせに。
師匠なんか更に金、土曜の休日前夜も「ケッ、明日も仕事かよ、気合入れるぜっ！！」と仮想するイメージトレーニングしてから酒を飲んでいるじゃないすかぁ。
師　匠：むうっ。緊迫感が無いと勝負している気にならんのだ。
ター坊：あのね、何の勝負ですか、何の？　でも、呑み助は崖っ淵に追い込まないと酔いが来ないっていうのも確かですよね。しょっちゅう呑んでますから。そこでハイリスク・ハイリターン（？）な、何もかも愛を追い越してゆく、土砂降りの１車線の人生を突き進む呑み方をしてしまうのです。下戸の方には到底解らない心理でしょうけど。
師　匠： たぶん理解してもらえんだろうなぁ。というよりわしらが異常なのかも知れぬ。
ター坊：会長がそんな弱気でどうするんですかぁ。一生懸命会員拡大しましょーよ？　という訳で、この主旨にご賛同いただける方は、フリーダイヤル0120…
師　匠：いないと思うぞ、そんな輩は。よし、今日はもうくだらん話はこれくらいでお開きにして、ター坊一杯つき合えや。
ター坊：へい、わっかりやしたぁ〜♪
師　匠：やはり、独りで呑むよりふたり、大勢の仲間と飲めば楽しく酔えて、酒もつまみも美味しく感じるという事だな。きっと。
ター坊： そうですね。それがいちばん幸せなことです。
師　匠：ところでター坊、今日は何曜日だったっけ？
ター坊：師匠ぉ、もう酔っ払っちゃったんですか？　今日は体育の日で日曜日です。でも明日は振替休日でおちごとはお休みですね。
師　匠：なっ、なにぃーっ！！
ター坊： どしたんですか？　何かヤバイことでも？
師　匠：ばかもん、安穏に呑んでられるかっ！
　　　　　今すぐ気合を入れて「イメトレ」じゃ！
ター坊：うへぇ、何も二人の時やらなくってもいいんじゃ…
師　匠： 五月蝿（うるさい）、会長命令だっ！
ター坊：へいへい。「えーっと、明日は一応会社にいって、おちごとして、（ブツブツ…）でもお天気良さそうだから、やっぱりアルファロメオでどっかドライブにいって…うふふ。」
師　匠：マジメにやらんかっ！？　馬鹿者（バシッッッ！！）
ター坊：ひでぶっ！！

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